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月別アーカイブ: 6月 2012

「赤の愛」が何故、最後の作品なのか?

(ネタバレも有ります)

「トリコロール」をようやく三作品ちゃんと観ました。「青の愛」で止まっていたんです。映像美は凄いけど、死んだ夫には愛人がいたとか、死んだ夫の姑との関係がうまくいかないなど、オゾン監督の「まぼろし」でも観たし、フランス映画で多く取り上げられている話だったからです。もともとキェシロフスキ監督は大好きで、私自身の思想の練り上げ方にも似ていた部分があったので、残りの「白の愛」「赤の愛」は、観るのを少し寝かしといたんです。映画を観るのはタイミングが重要だと思っているからです。で、最近はウツ気味になり、思索するには丁度良くなりました。

「白の愛」は、デカローグの「ある愛に関する物語」の焼き直しに感じました。ラストなんか、そのまんまですもの。少し落胆しつつ、「赤の愛」を観ました。完全にやられました。神秘主義が復活していたし、何故、この映画を最後にすると言ったのかが、よく分かりました。

ここでトランティニャン(言いにくいので「トラちゃん」にします。)を目撃。なんと素晴らしい役者なんでしょう。と思っていたら、翌日観たブルーレイ「暗殺の森」の主役じゃありませんか。自分の中で、老人と若者の同じトラちゃんを連続で観て、さらに感慨深いものになりました。トラちゃんは、キェシロフスキ監督の体現でした。それは、ラストシーンから始まるのです。沈没したフェリーから脱出した数人の人々をテレビで観て、彼らの話を妄想するのです。それらが「青の愛」となり「白の愛」となります。「赤の愛」では、自分自身も登場します。老人は退役判事ですが、「赤の愛」では、司法試験に受かったばかりの若者が登場します。これは判事の若い頃とみるのが妥当です。判事は若い頃に恋人に裏切られたと告白するし、実際、この若者も恋人に裏切られます。判事は「夢のなかで、50歳の君と一緒にいた」と、主人公の女に告げますが、このあたりから、「赤の愛」を含めて、トリコロールという映画そのものが夢であり、夢のなかで観る夢が現実なのかもしれないという錯覚をもたらします。主人公の女性でさえも、もしかしたら夢のなかで判事に会っている?夢自体が未来の暗示?映画的な整合性がちゃんと説明されない箇所もありますが、その錯覚こそ、この映画の伝えたい部分であり、割れた窓から判事が外を見て何かを考えているのは、逆に私達が判事を見て何かを考えているのだという、見る見られるというか、思想が双方向になってくるゾクゾクする感覚を表出させる映画だと思いました。(今も、あの部屋から、現実の私達を観察している判事(監督自身のこと)が居るような気がします。監督はすぐに実際に亡くなり、あの部屋の住人になってるような気さえします。)

そういう思想の到達点に立ったからこそ、「もう映画を辞める」と言い出したのでしょう。映画は監督の思想を練り上げるものです。特にヨーロッパではそんな文化です。(残念ながら日本はそうなりませんでした。思想を練り上げる行為は「作家性」と呼ばれますが、日本ではやっかいなモノとして見られています。思想は娯楽には不要だと信じられ、業界人にその知識すら有りません。哲学文化が根付かないのです。)

追記:「赤の愛」では、3回、急にカメラがぐわーと動くシーンが有ります。とても神がかり的です。そのひとつに、判事が「美しい光線が…」と言い、2秒後に太陽に照らされた床が光ります。出来事の起こる前にセリフを言うのです。すごくこの作品をよく表しているシーンです。こんな神がかったシーンを作れるなんて素晴らしいと思います。自然に待っていてもなかなか訪れるものではありません。

追記:ハネケ監督といえば、観客の心をイライラさせる手法で、手玉に取る人で有名ですが、彼の最新作でもトラちゃんはいい演技をしているようですね。今年のカンヌは「老い」がテーマになっているような感じですが、巨匠たち自身が、老いてきましたので、そんな心境なのでしょう。トラちゃんがかなり萌え萌えです。(演技に色気がある人って素晴らしいと思います。こんな老人になっても。。)

↑たぶん、ボケた妻に語りかけているようなシーンかな。自作「眠る右手を」でも、映画の後半は、人間で居ることに悩み苦しんだ妻が、ある事件で白痴になる展開があります。主人公の夫(草野康太)は、聴こえていない妻に必死に語りかけます。何度も何度も。まるでそこに自分の存在を確認するかのように。しかし妻は応えません。それは「神の沈黙」を意味します。一方通行の祈りを捧げるしか無いのです。

それでも、人間は理解し合えるという(捨てられない浅はかな)希望を持っています。そして話しかけ続けるのです。沈黙が起きたからこそ、話すことを始めるのでしょう。理解し合いたいという気持ちが、ラストに持ち上がるのを観客にも感じて欲しかったのです。そのラストのために、映画自体は、駆け引きばかりを繰り返し、脱落する人々を描いているのです。

思想を練り上げるという映画文化を、日本からも誕生させたいですね。なんで、最近はこうなっちゃったんでしょう。。。

 
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投稿者: : 2012年6月25日 投稿先 雑談, 映画レビュー

 

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花が散る

「教室」脚本のダウンロード公開中。
https://poetryfilm.wordpress.com/kyakuhon/(ダウンロードページ)

私の母は、美しいものが好きで、お金のある家ではありませんでしたが、よく花瓶に花を活けていました。書道や日本舞踊も好きで、師範免許も持っているほどです。いつも理知的で、私にとても影響を与えました。私は、2月に帰省しようとしていたのですが、顔の半分が動かなくなり、入院をしなければなりませんでした。その期間に、母が片足が腫れる病気になり、母も強制入院しました。足は2倍にも膨れたそうです。ようやく、私は、4月に帰省したのですが、もう母の姿はありませんでした。

母は、変わってしまいました。おばあさんの顔になり、行動もおかしいのです。父が掃除機をかけると、家の中を逃げ惑いました。掃除機の音が怖いと言い、わざと私を苦しめるために掃除をするのだと、家の中を走り、おおげさに体を丸くして震えていました。私は母に言いました。「掃除機におびえて、そんな行動をするのは変だと思わない?掃除しなきゃいけない時は、ベランダに逃げるとかして、掃除をしやすくさせなきゃね。」と。

母は、入院の時の話もします。お医者さん達は、私を実験台のように、問答無用で手術したのだと言うのです。そんな時は「問答無用に、すぐに手術してくれて良かったね。静脈瘤は時間との勝負だから、まな板の鯉にしてくれて良かったよ。感謝しないとね。」と答えます。価値観をさりげなく転換させようと私も必死でした。

母の足の静脈瘤の血栓が脳に到達しているのではないかとさえ思いました。人格の変貌は、とてもキツイ状態です。自衛隊あがりで家庭を顧みなかった父親は、しずかに母の面倒を見ています。一緒にオフロに入ったり、一緒の布団で寝たりしています。私には、父親の愛情を感じることがなかったので、この父親の行動には、とても感激しました。その父も、人工透析に通うようになり、両親らは、「もうすぐ居なくなること」を子供たちに伝えます。私の一家は、精神疾患の家族です。兄弟はすべて精神を病んでいます。私自身は、家族を捨て東京に逃げ、映画製作に没頭しましたが、最近は、とてもウツが辛い状態です。精神病をなんとかモノ作ることに、差し替えてきましたが、かなり追いつめられています。

「教室」の脚本自体が、私そのものののようです。花が散るのは仕方のないことですが、私の花は「教室」をきちんと映画にすることだと思っています。私にしか見えていない花も、きちんとした解釈で映像にしたいのです。

ここまで、映画に生かされ、映画に殺されるとは思いませんでしたが、私は、映画を作ることに逃げ込んだのですから、映画で落とし前をつけようとするのは自然の流れです。

 
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投稿者: : 2012年6月25日 投稿先 雑談

 

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ゴリラの粒と光


粒の方です。

合成モードはオーバーレイ推奨のようです。コントラストなどをいじって粒感をアップしたりも可。

FREE版(これだけで十分な気がします)


光の方です。

合成モードはスクリーンモード推奨のようです。正式ではないのかゴリラサイト紹介して無く、ツイッターで教えてもらいました。

フレアに関しては、ピタッとはまると、自然のレンズフレアなので美しいとは思いますが、調整ができないので、Knoll Light Factory の方がいいかも。グレインに関しては、これまでどこも似たり寄ったりなグレインだと思いますが、このゴリラグレインは、本物のフィルムグレンだけあって、かすかですが素晴らしい味があります。かすかにフィルム独特のフリッカー的なゆらめきも自然です。明滅しているかすかなスクリーンの感じが出来ます。人工ではないのが良いところです。AEだと、調整レイヤーにゴリラグレインを適用して、絵によって調整しています。

ゴリラグレインを適用する時には、まず素材のビデオのグレインを、ノイズ除去フィルターで取り除きます。ツルツル画質になったら、MBLなどで色調整して、その後、シャープネスを掛けて、ゴリラグレインを適用すると、うまい具合になります。

グレインを何故掛けるのかというのは、それぞれ意見がわかれるところです。自分は、映画の叙情的な空気感を出したいと思っていますし、シャープネスかけすぎ感をやんわりさせながら、実質のシャープさを失わせない感じが好きです。かすかに揺らぐ感じは、無意識に「はかなさ」を観客に感じさせるとも思います。

http://gorillagrain.com/
http://flashbangfx.com/vintage-insta-flares/

昔、押井守さんが、こういうゆらぎやまばたきなどを排除して完璧な映像を作るのだとセミナーで言いました。質疑応答がなかったので、反論の機会がありませんでしたが、私は、一見不要なまばたきなどの部分にこそ、そういう雑味の部分にこそ、人間の心を動かす「何か」が含まれていると思います。私は押井さんの実写作品は感心こそしますが、心は全く動きません。即興演出なども含めて、役者という人間とのコラボが出来ないと難しい領域だと思っています。

こんな雑味な粒や光が、アナログ要素を失わずに、デジタルで適用できるのは、非常に個人製作者にはありがたいことです。

 
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投稿者: : 2012年6月22日 投稿先 編集

 

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GH2の外部バッテリーの悩み

GH2の純正バッテリーは凄く容量が小さく、以前から問題になっていました。eneloop music boosterを使う方法が広くネットで広まっていたけれど、なんだか取り回しが面倒そうなので困っていたんです。結局、自分は、純正バッテリー以外に、安い互換バッテリーを追加2個購入し、撮影中は、この3個を交換しまくって使っていました。だいたい40分位使って交換する感じです。(純正バッテリー6千円(!!) 互換バッテリー千円以下(安すぎ)な感じ。しかも互換バッテリーは1400mAhも有る!)

そんなところに、Doda-E というバッテリー2個装着できるバッテリーグリップが発売されて、すぐに売り切れる大人気商品になっています。2個使えるってことは、80分は交換なしで撮影に集中できそうです。Amazonでもすぐに在庫切れになるので頻繁にチェックしてましたが、ようやくポチッと購入でき、本日、届きました。

外箱にはなにやら4種類のバージョンがあるようです。

ネットで調べると
(1) MIG-PGH2B = only BODY (B = BLACK)

(2) MIG-PGH2AB = BODY + MEB-03-c (A = external AA battery pack)

(3) [New specifications] MIG-PGH2RB =BODY + mini IR 2B & RHS (R = IR Remote, not the wired remote control)

(4) MIG-PGH2RAB = BODY + MEB-03-c + mini IR 2B & RHS

の事のようです。

で、手順どおりにGH2の底に取り付けます。合体!!

さて、通常、互換バッテリーは、残量表示が出来ません。バッテリー情報を本体に送信しないことで偽物を使えるようにしているのではと思います。ところが、ネットでは「Doda-Eを通すと、互換バッテリーでも残量表示が出来る」とのこと。Doda-Eにそのボタンが有りました。Aボタン Bボタン DCボタンです。DCはコンセントからの電源供給モードだと思うのですが、マニュアルには「本製品では使用しません」と何故か書かれてあります。

で、AボタンとBボタンのマニュアル説明には、要約すると、こう書かれています。「バッテリーにはカメラへバッテリー情報を供給する回路が搭載されています。必ずAかBを選んで、本体にデータを送信してね。」ふむふむ、じゃ互換バッテリーを2個入れても、このDoda-Eが、嘘情報を本体に送信してくれるから、互換バッテリーも使えるってことだ。

しかし、ここからが、大問題。本当に訳がわかりません。結論から言うと、

左側には必ず純正バッテリーを入れとかないと、バッテリーを認識しないんです!!

右に純正入れたり、AボタンじゃなくBボタンにしたりといろんな組み合わせをしましたが、どうしても「左に純正入れろよルール」を崩せません。そのかわり左に純正入れると、右側に入れた互換バッテリーを認識してくれます。「左に純正入れろよルール」を守れば、夢の2個バッテリーが可能になります。悪あがきで、右だけに純正いれて、左に何も入れない状態でも「このバッテリーは使えません」と表示され、即シャットダウンします。

うーん、バッテリー情報を本体に送信しないとか、Doda-Eが嘘バッテリー情報を送信するとかって、どうなったんでしょう??

6千円以上もする1200mAhぽっちの純正バッテリーとはおさらば出来ないようです。

結論:Doda-Eは、現場を混乱させるだけのグリップのようです。

追記:一応、Doda-Eは純正バッテリー以外は使用しないでくださいと書かれています。互換バッテリー使用もパナソニックは認めていません。これらの使用で故障しても自己責任でお願いします。

 
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投稿者: : 2012年6月22日 投稿先 機材

 

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「眠る右手を」予告編

「眠る右手を」の予告編です。

愛知芸術文化センターの出資した300万円と自己資金で作り上げました。当時は選択肢としてハイビジョンは存在して無く、DVしかない状況。DVでしたが、香港国際映画祭ほかあちこちで上映いただきました。しかも3時間28分という上映時間、休憩5分含みます。

千葉の館山で役者とスタッフが半年合宿して撮影をするという狂った体制でした。

http://film.m78.com/migi/

なぜだかまだサイトが残っています。(プロバイダー契約は終わっているので、いつ消されてもおかしくないのですが。)サイトを見ると当時の気持ちが蘇ります。

(物語)

画家のシンが突然不治の病に冒され右手が動かなくなり、この長編物語は幕を切って落とす。妻のケイはカウンセラーを仕事に持つが、感情というものを失っている。一人息子のコウは人の心が読める為、自ら心を閉ざし「言葉」を使わなくなっていた。そんな家族であったが、シンは病の為、次々と体の一部を失っていき、その姿は家族の関係性をも変化させていく。激情が蘇るケイ。自らの体に画鋲を刺していくコウ。破綻していく家族の元に、オカマの介護人ソラがやって来る。脳天気なソラより再び関係性を変化させられた家族が、その辿るべき道を模索している中で、周囲の人間達の嫉妬や駆け引き、裏切りから次々と悲劇や惨劇が襲いかかる。物語から脱落する人間を見送りながら、画家のシンは家族の絵を描き上げようとしていたが、そんな家族を見下ろす存在にコウだけが気付こうとしていた…。

(狙い)

それぞれの欲望や策略が渦巻く群像劇だが、負けた人々は、一人消え、二人消えしていく。最後に取り残されたかのように見える家族が、何を見つけるのか、というのが狙い。人間の表(カラダ)と裏(ココロ)の関係がめまぐるしく変わることで、価値が漂白されていきます。体を失いながら心を取り戻す主人公とその逆で最後は心が消える妻、この夫婦や、駆け引きをする人々のココロを読むだけだった自傷癖の子供の最後のアクションに、救済の光を感じてくれないかと願いました。骨太な文芸作品の趣です。

今にして思えば、自分自身のダークパワーの集大成。これ以降は、純粋培養方法へ切り替わっているので、明らかに分岐点と言える作品です。

 
2件のコメント

投稿者: : 2012年6月20日 投稿先 過去作

 

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「SPICA」予告編

「SPICA」予告編です。以前の記事も読んで頂ければと思いますが、6年前の作品です。かなり沢山の意味のレイヤー構造を持ち、最後の一点に集約されるように作りました。その一点こそ「SPICA」です。忘れないうちに、あれかこれや記録に残しとかなきゃなと思います。昔の作品なので「監督解説」とかしても良い頃なのではと考えています。

オーバーハウゼン国際映画祭インターナショナルコンペ部門ノミネート

現地レポート
http://openart.de-blog.jp/openart/2006/05/post_10d3.html

監督喜びの声
http://openart.de-blog.jp/openart/2006/05/post_e15f.html

 
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投稿者: : 2012年6月20日 投稿先 過去作

 

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私達こそ「繰り返し」そのもの

「教室」脚本のダウンロード公開中。
http://t.co/4Q3CrqrA

「教室」では、多くの繰り返し描写が起きる。セリフだったり、シチュエーションだったり、傷だったり、差し込む光だったり、気が付かない細かな繰り返しも多数起きる。繰り返しとは、私達の事である。

死への恐怖も、生への希望も、全ては、繰り返しの中へ帰っていく。子供へとつながる命や、自殺が止まらないこと、毎日の生活、何度も体験する葬式、過去に死んだ膨大な人間たち、すべて繰り返しへと帰るのだ。

その繰り返しは、聖なるモノのような気さえ起こし、映画の中では、神話性を紡ぎ出す。「教室」の中の多くの繰り返し描写に、何か崇高な輝きを感じてくれるのなら嬉しい。作者として本望である。

「教室」には、季節の変わり目にオペラを使う。季節も繰り返し効果を産み出す。そして劇中には、ラフマニノフ「ヴォカリーズ」が演奏編成を変えて繰り返し流れる。曲自体も繰り返し構造を持っている。

脚本を書く人、映画を作る人、作り手の皆さんにも、繰り返しの持つ味付けや、効果、力を考えてもらいたいと思います。「教室」の脚本を配布しています。是非、お読みください。

「教室」脚本のダウンロード公開中。
http://t.co/4Q3CrqrA

 
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投稿者: : 2012年6月13日 投稿先 進行

 

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